2010年9月22日水曜日

知財戦略から見るホメオパシージャパン

781です。またホメオパシーです。

今度は知的財産権関係で見てみましょう。まずはさくっとIPDLで 出願人:ホメオパシー or 由井寅子で検索します。以下の9件がひっかかります。「剤および剤製造方法」と「ケース」関係の2つのグループになりますね。全者は個人として出願して,後者はホメオパシージャパン株式会社で出願しています。ちなみにいずれも発明者は由井寅子となっています。この時点できちんと審査に通り登録された特許は一つも無いことが分かります。(表がはみ出ちゃいます。ごめんなさい。)


項番
公報番号
発明の名称
出願人
1
薬玉用タブレットケース
ホメオパシージャパン株式会社
2
薬玉用タブレットケース
ホメオパシージャパン株式会社
3
ビン入り錠剤の収納方法とその収納ケース
ホメオパシージャパン株式会社
4
剤および剤製造方法
由井 寅子
5
剤および剤製造方法
由井 寅子
6
剤および剤製造方法
由井 寅子
7
剤および剤製造方法
由井 寅子
8
剤および剤製造方法
由井 寅子
9
剤および剤製造方法
由井 寅子


登録済の特許はなくても,これから登録される可能性のあるものもあるので,こういう場合は「経過検索」を使って,それぞれの特許出願がどういう状態にあるのか確認するのがセオリーです。

では「剤および剤製造方法」の特許6つについて見ていきましょう。
この6つは審査請求なしのまま,見なし取り下げとなっています。そのため,これから先も特許として登録されることはありません。

次,特開2005-168575のビン入り錠剤の収納方法とその収納ケースです。これは公報の図を見るに,レメディキットのケースですね。これは経過検索を見ると拒絶査定となっています。
続いて薬玉用タブレットケース2つです。これは,レメディ単品の(大)に使っているケースですね。特開2005-334112の方はやはり拒絶査定くらってます。特開2006-346317の方はまだ審査請求を出していませんね。

問題点(1)
特開2006-346317は特開2005-334112を包含していると思うんですけどねぇ…1発明1出願が原則でしょう。特開2005-334112で解決できない新たな課題があって,それを解決したのなら,特開2005-334112を参照して書くべきところを,含めて出し直しみたいにしちゃっています。

問題点(2)
さて。こっちの方が大問題。「剤および剤製造方法」の特許出願(見てるのは公開公報ですけど)を見てみましょう。6つもありますが,なんのことはありません。「固形物を粉砕」「気体を供給」「動物を浸漬」「液体」「植物を浸漬」「エネルギーを照射」と,原物質の違いだけです。
ふつーなら請求項1で何でも良いように書いて,「(固形物・植物・動物…)をすることを特徴とする請求項1記載の剤」とかすると思うんですけどねぇ。

ともかく,最初の母液作成工程が違うだけだということが分かりました。では1つに絞ってみていきましょう。特開2006-346317の要約を見てみましょう。
(57)【要約】
【課題】 希釈・震盪溶液の受入れが極めて簡単な技術を提供することである。
【解決手段】 固形物に糖類を加えたものを細かくする粉砕工程と、前記粉砕工程で得たものに更に糖類を加えて細かくする粉砕工程を、複数回、繰り返して行う工程と、前記繰り返して行う工程を経て得たものにアルコール溶液を加える添加工程と、前記添加工程で得た溶液を震盪する震盪工程と、前記震盪工程の後、該震盪溶液をアルコール溶液で更に希釈し、該希釈溶液を震盪する希釈・震盪工程を、複数回、繰り返して行う工程と、前記繰り返して行うことにより得られた希釈震盪溶液を有形物中に含浸させる工程とを有する剤製造方法。
課題の「受け入れが極めて簡単」というのが分かりにくいですが,「発明が解決しようとする課題」で説明されています。
【0010】ところで、上記希釈・震盪溶液の投与の方法として、希釈・震盪溶液の数滴を舌の下に入れ、飲み込むのでは無く、そのまま、その状態に保っておくことが要請される。
【0011】しかし、希釈・震盪溶液そのものでは、受入れが実に大変である。
【0012】従って、本発明が解決しようとする課題は、希釈・震盪溶液の受入れが極めて簡単な技術を提供することである。
「これまでは溶液そのものを落とすのですぐ飲みこんじゃって困る」と言っています。そして,それを解決手段の「有形物中に含浸させる」だそうで。

…あれ? 「砂糖玉に浸す」って普通のレメディの作り方じゃないですか。出願の2000年時に無かったアイデアなの?

そんな訳ないですよね。恐らく,それを分かっていて日本のホメオパシー市場における砂糖玉の独占を狙って出願したのではないでしょうか。ひどい話です。
で,そんなことが特許法で許されるかというと…はい,どういう扱いになるかは宿題としておきましょう。








































2 件のコメント:

  1. はじめまして、うさぎ林檎と申します。

    もうお調べになっておられると思いますが、ホメオパシー出版(由井寅子代表取締役)出版の、医術のオルガノン第六版に記載されたハーネマンによるレメディーの作成方法です。

    ※希釈
    1)元物質 1グラン(=ドイツの昔の単位で60mgぐらい)+乳糖 100グラン→へらでかき混ぜ、乳鉢ですりつぶす。→/100
    2)1グラン(/100)+乳糖 100グラン→へらでかき混ぜ、乳鉢ですりつぶす。→/10,000
    3)1グラン(/10,000)+乳糖100グラン→へらでかき混ぜ、乳鉢ですりつぶす。
    これが100万倍希釈物質。

    ※振盪
    1)希釈粉末 1グランを蒸留酒:蒸留水=1:4の液に500粒に溶かす→1滴+100滴の蒸留酒→振盪100回→この溶液で数粒の乳糖を湿らせる。
    2)湿らせた1粒+100滴の蒸留酒→振盪100回→この溶液で数粒の乳糖を湿らせる。
    注)湿らせた乳糖は吸い取り紙の上に素早くまいて乾燥させる

    この2)手順29回目の乳糖1粒+100滴の蒸留酒→振盪100回がレメディーの母液となり、この溶液で湿らせた乳糖の粒が"レメディー"。

    自分のところで出版した本に記載された内容を、自分の発明として特許申請使用というのは、流石のとらこイズムです。

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  2. 特許法での扱い,宿題にしていたのですが単純明快でした。
    特許法の教科書っぽい本を探したら以下の記述がありました。

    青山紘一 特許法[第12版]
    http://www.amazon.co.jp/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E6%B3%95-%E9%9D%92%E5%B1%B1-%E7%B4%98%E4%B8%80/dp/4587036374/ref=sr_1_8?ie=UTF8&qid=1287643235&sr=8-8

    によると「共同発明を勝手に単独で出願したり(共同出願違反)、他人の発明を自分の名で出願した場合(冒認出願)は、特許を受けることができない。共同出願違反や冒認出願により特許を受けた場合はその特許は無効となり(第123条1項2号・6号)、詐欺の行為の罪(197条)となる。」だそうです。

    第百九十七条  詐欺の行為により特許、特許権の存続期間の延長登録又は審決を受けた者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
    http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S34/S34HO121.html#1000000000000000000000000000000000000000000000019700000000000000000000000000000

    実際には審査請求を行っていないので「特許を受け」ていない状態なので詐欺は成立していませんが,(罪には問えない程度の)未遂の状態でしょう。


    ちなみにうさぎ林檎さん(はじめまして。ご活躍はあちこちで拝見しております。某所のcarpflagは実は私です)からご指摘頂いた医術のオルガノンや,ホメオパシー in Japanは微妙に出願後だったりするので,上記行為の証拠にならないんですよね…微妙微妙。

    #エントリ起こすつもりだったけどめんどくさくなってコメントになってしまいました…

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